ぎりぎりフロッピー

あまりに物忘れが激しいので外付けHDの一つとします

「ミツバチのたどったみち」を読んだ

タイトルの通りミツバチの本を読んだのですがあまりに面白かったので短いけど感想として残しておく。読んだのはこちら。(https://amzn.asia/d/3o9Nhec
 
そもそもなぜミツバチの本を読んだのかと言うと、わたしは毎年クマバチの撮影のために藤の名所を回る程度のクマバチのファンなのですが、クマバチ単体で取り扱っている本はなかなかなく、クマバチはミツバチ科の虫なのでミツバチの本を読めばクマバチの情報もあるかな?と思って借りた。実際、この本は第四章で約20pを使ってクマバチについて書いてくれている。ありがたい限りです。
 
わたしがそれまで知っていたクマバチ情報は
・黒い体に黄色の胸毛をもつ大型のハチ。
・性格は温厚だけど、繁殖期のオスは動くもの全てをメスかどうか確認するため、よく人間の周りをホバリングして怖がられる。
・オスは嘴のような黄色い模様が顔にあり、とても可愛い。
・クマバチと藤の花は相利共生
・木に穴を掘って生活する
くらいだったのですが、この本には繁殖から日々の生活、独特な巣の作り方、生息地域、年を重ねることによる身体の変化などについて詳細に記されており、大変勉強になりました。
 
特に営巣については「クマバチは強靭な木質繊維の征服に成功したほとんど唯一のハナバチである(p68)」とある。顎で木材を掘ってアパートを作るらしい。かなり多くの種類で親の作った巣を子供が継承して掘り進めるらしいので、生活圏内は変わらないだろうから、毎年同じ藤の花に会いに行くのかしら、とか、長い長い時を生きる藤の花も親しかったクマバチの子供たちが来てくれるのを枝を長くして待っているのかしら、とか思うとなかなかロマンチックだ。短命種と長命種の友情を思わせる。いいなあ。誰か百合物語の題材としてぜひ使ってほしい。百合じゃなくて藤だけど。
 
脱線した。この本の作者は坂上昭一さんという、生物学者で、特にハナバチの研究で有名な人らしい。専門書としての意味が大きいと思うけど、わたしのような虫初心者であっても読みやすい文章で、大半をスラスラ読めました。
クマバチをはじめとして、ハチごとに章が分かれており、書き出しは大体いつも、筆者とそのハチとの可愛らしいエピソードと、筆者がそのハチの見た目や仕事ぶりを褒めるところから始まるので、名前を知らない初めてお会いするハチにも親近感を感じながら読み進められました。推しを布教するのが上手いな。研究対象を推しって言うな。でもハチが大好きなんだなあと言うのが文章中から伝わってくるので、読んでて嬉しくなる。オタクは推しのことをイキイキと話すオタクを見るのが大好き。
例えば、クマバチの章では「キムネクマバチは漆黒の体と毛に加え、胸の上に鮮黄色の毛を密集させている美しいハチである」と、マルハナバチの章では「彼女(オオマルハナバチの女王)が黒、赤、白の三色の長毛で覆われた巨体を花に預ける時、花は重みでたれさがり、女王は、戯れているネコのように仰向けになって、背中を地面につけたまま蜜をのんでいた(p196)」とあるように、とにかくハチは美しく、素敵なものとして捉えている。わたしもそう思う。
それでいて、擬人的になりすぎないようにきちんと線引きをして、人間に寄せることなく、生き物をその生き物のままでよしとする誠実な姿勢はわたしの好むところでありました。生き物の本を読んでいると過剰に擬人化して愛情や絆の話に着地してしまうものに遭遇することが多くあり、それはあまりわたしの好むところではないので…(個人的には、人間的な愛情や絆といった増減のある曖昧な感情に左右されるものではなく、群を存続させるために相互を保証するシステムがすでに出来上がっている動物の方が生命のあり方としては好みです。)
 
とにかく、知りたかった以上の豊富な情報量、長すぎず難しすぎない文章、筆者の虫に向ける敬意の混じった目線、そして時にユーモラスかつおしゃれな語り口調(「素晴らしい本能の王国」、「花から花へと餌をたずねあるくのは、狩猟というスリルを伴う行動より、よりロマンチックかもしれないが、よりドラマチックではない」)と、全体的に読んでいて楽しい本でした。
 
そして最後に、この本の冒頭は「またミツバチの本!」から始まるのですが、筆者は、ミツバチの本はたくさん出ているけど自分の探ってみたい角度から述べてみたかったので出します!と力強く述べていてオタクとして尊敬の意を表します。そうだよな、いくらモチーフが被りまくってても自分の着眼点で述べたいと思ったら、本を出すべきなんだよな。わたしもその気持ちを持って同人女をやっていきたいです。
なんかまとめが酷く矮小なものになってしまった。40分で書き上げるタイムアタックしています。後で書き直すかも。