ぎりぎりフロッピー

あまりに物忘れが激しいので外付けHDの一つとします

現代社会の子育ては人類史的に見ても異常

『ママたちが非常事態!?最新科学で読み解くニッポンの子育て』という本を読みました。産後の精神状態や育児に対する不安を、科学的なアプローチで納得させてくれる本でした。これこれ、こういうのが欲しかったんだよ。子育て本って「妊娠、出産とともに母性が生まれ、全てが喜びに変わっていく」みたいな宗教チックなものが多くていつもビビっていた。わたしは妊娠8ヶ月だけど母性とかほぼ自覚ないからね。本書は「人間は他の動物に比べて筋肉も体力も劣っていたからこそ数を増やして社会性を重視する生存戦略をとったし、二足歩行を選んだから骨盤が変形して産道が狭くなって、他の動物に比べて未熟な状態で出産するしかなかったから今こうなってるんですよ」と言ってくれて大変救われました。

本の感想文というか、内容で共感したり引っかかったりしたところを備忘録として残しておく記事です。今後出産や育児で大変な目にあっても、子供の態度や自分の心境の変化にも科学的な根拠があるとわかっていれば、ある程度納得して受け入れられるかなあって感じです。

 

【社会の変化に脳が追いついてない】

・出産後の母親は脳の上側頭回(子供の泣き声に敏感になる)、内側前頭前野(育児に喜びを感じる)、運動野(意思決定、行動力が向上)などの脳の30箇所以上が肥大化する

→これは作中で「女性は出産を経てスーパーウーマンになる」と述べていた科学者がいたけど、個人的には「ボコボコに殴られて顔が変形した」みたいなもんじゃないかなと思っている。育児ストレスのせいでそうならざるを得なかったんじゃないか?まあ、ものは言いようということで。

・出産が近付くと通常時よりも何百倍もの女性ホルモンが放出され、幸福を感じやすくなるが、出産した瞬間からそれが通常時に戻るので、不安や孤独を感じやすくなり、産後うつの原因の一つとされている。

・700万年前に生まれた人類はチンパンジーのような強靭な筋肉もなく、木登りも得意ではなく、常に外敵に狙われていたため、失われる命を想定して、多くの子供を産む必要があった。(=他の猿に比べて次回の出産ペースが早い)

・多くの子供を育てるため、自分の子供も他の子供も関係なく授乳するなど、群れの中で協力して子育てを行う「共同養育」が基本となる。

・共同養育を行うため、相手を深く信頼する必要があり、より高度な社会性を獲得していったのではないか(という仮説がある)

・出産後に女性ホルモンがすぐ通常値に戻って孤独や不安を感じやすくなるのは、共同養育を行う(仲間と一緒にいさせる)ための脳の仕組みの名残。

現代社会は核家族化や地域コミュニティの希薄化などで共同養育ができない。だが人間の脳の仕組みは共同養育向きの作りから急速に変化することもできない。このミスマッチから、現代日本の母親の7割が子育て中に孤独を感じ、産後うつなどになる。

→産後もしっかり女性ホルモン出して感情を安定させてくれよ!と思っていたので、こういう説明をされると「まあ仕方がないか…」の気持ちになった。

 

【母性は最初から備わっているわけではない】

・人工飼育下で育ったチンパンジーは、出産を経験しても、自分の体から出てきた子供を自分の子供として認識することができず、攻撃したり、育児放棄したりするケースがある。これは野生の群れで暮らすチンパンジーには見られない。

・出産経験のない女性に三ヶ月間、保育園での育児体験を行ってもらったところ、赤子の泣き声や泣き顔に対し、脳の反応する場所が増えていた。つまり、母性というものは最初から備わっているわけではなく、実際に赤子に触れて、育児を経験する中でスイッチが入り、育まれていくもの。

・かつて共同養育が行われていた時代は、他者の出産、育児を間近で見ることができたので、このスイッチが入りやすい環境だったが、現代はそういう機会が減ったため、母性を育むことについては不利な環境にある。

→やたらと母性が神聖視される風潮が嫌だったのでこの話は本当に嬉しかった。というか、やたら母性を神聖視して「産めばわかる!」みたいなこと言う年配の人って核家族化前の時代の人だろうから母性が育まれるのが当然みたいな環境の人だったわけで、なんかずるいよな〜なんの準備もなく突然子育てが始まる現代の人間に同じものを求めないでほしい。

 

【なぜ人間の赤子は未熟なのか】

・夜泣きが起こる原因は胎児の頃の睡眠リズムが継続しているから

・胎児は30〜40分の浅い眠りと深い眠りを交互に繰り返し、浅い眠りの時に数回目を覚ましている。

・胎児は母親の酸素を消費して生きているため、母親の肉体に負担をかけないよう、母親の酸素消費量が減る夜間帯に、目を覚すことが多い。

→気遣いご苦労!なんかこういうの読むと、10ヶ月間ずっとこっちの体を気遣ってくれたんだから、夜泣き大変だろうけどなんとかこっちも気遣ってやるか、の気持ちになるな。いや、実際夜泣きが始まったらグロッキーになるのは目に見えているけど。

・大半の動物は生まれた時の脳の大きさも機能も大人と変わらないが、人間の赤子は大人の脳の3分の1サイズであり、機能も未熟。それは、人間が二足歩行を選択し、骨盤の形が変形し、産道が狭くなったことから、人間の赤子は未熟な状態で生まれざるを得なくなった。

・人見知りについても、脳の未発達が原因。

・一般的に動物は目を合わせること=威嚇や攻撃の前段階=緊張や恐怖を感じる

・人間も他の動物と同じ緊張や恐怖を感じるが、社会性を重視する生存戦略をとっているため、その恐怖などは前頭前野で押さえ込んでいる。

・人間の赤子は、自我が芽生えて他者に興味を抱くものの、前頭前野が未発達なので、恐怖に負けて泣き出してしまう。つまり、人見知りをしてよく泣く赤子は他者に興味津々である。

・人見知りする赤子と触れ合う際は、赤子と親しいもの(母親)と親しくする姿を見せ、最初は目を合わせずに距離を近づけていくとよい。

→人間の赤子、アホすぎてかわいいな。近づき方が犬と似ているのもなんかいいね。

・イヤイヤ期は前頭前野(抑制機能)の未熟さで起きる。その際に怒るばかりだと、前頭前野ではなくへんとう体(恐怖を感じる部分)で欲求を無理矢理押さえつけていることになるので、前頭前野の発達につながらない。

・自主的に我慢させ、抑制機能を育てる必要がある。

・具体的な目標をもたせ、自由に遊ぶことを我慢させ、何をすれば良いか自分で考えさせることが有効。

→ここらへん読んでると、前頭前野の萎縮が他の同年代より早いと診断された父のことを考えました。抑制機能、落ちてきているんだろうな。具体的な目標をもたせた方がいいんだろうか。

 

【産後クライシスについて】

・愛情ホルモンとして有名なオキシトシンは、子育てを邪魔するものに対して攻撃的になる働きもある。

・男性は女性に比べて、出産後の脳の肥大化などは小さく、泣き声に過敏な反応をする女性からすると、不慣れで手際が悪く、無関心に見えやすい。

・結果、育児に不慣れな夫に対して攻撃的になり、攻撃された夫は育児に非協力的になる悪循環。

・共同養育は直接的な育児だけでなく、目に見えないところでも役割分担して一緒に養育してくれているという意識が必要。

→男性にも(女性と比べて小さいものの)育児に適応して脳の肥大化が起きるという実験も掲載されていて、確かに、と思った。父母学級参加してから、夫の育児に対する真剣さが増した気がする。それまでは「子供楽しみ🎵」みたいなハピハピ男だったのが、「ちゃんと父親できるのか不安になってきた…」とよく漏らすようになり、良い傾向だなと思っています。

 

そんな感じでした。この記事を書く前にすでに一回、引用のページとか文章とかをきちんと体裁を整えた記事を作っていたのですが、Googleドキュメントのファイルがうまく同期できずに白紙になってしまった。もう一度、きちんとした文章にする元気はないので、引用した文章は省略が多く、若干のニュアンスの違いとかあると思います。すごくいい本だったので、もし気になった方がいたら、ぜひ読んでみてくださいね。