ぎりぎりフロッピー

ぎりぎりフロッピー

あまりに物忘れが激しいので外付けHDの一つとします

大好き、母の友

「母の友」という雑誌をご存知ですか。「子どもとおとなが一緒に、無理せず、楽しく暮らせる、そんな毎日を目指しています。絵本情報も満載。『知ること』で心が楽になる。『読むこと』で安心できる。“母”をもっと自由なほう、軽やかなほうへ」という素敵なコンセプトの情報雑誌です。わたしがこの雑誌に知り合ったのは、出産を終えた春の終わり、自宅に戻り、夫に子どもを預けて保育園の見学に行ったついでに寄った図書館でした。寝不足が続き集中力の衰えを感じながらも何か本を読みたいと思い、雑誌コーナーを眺めていたところ、たまたまタイトルが目に止まり、「わたしも母になったのだからこういう本も読んでみるか」と思って借りたのがきっかけです。

家族、母、子ども、社会をテーマに取り扱ったコラム、子どもの病気、発達についての相談コーナー、レシピ、野草など素敵な自然を探す特集コーナーだったり、子どもに読み聞かせる絵本が載っていたり。内容はどれも母、もとい家族向けでわたしにとっても必要な情報がたくさんありました。内容以上にわたしが好きだったのはどれもとても優しい言葉で語られているところです。重いテーマを扱う回でも、決して怒りに囚われることなく、問題点と真摯に向き合い、できることを考え、希望を持たせて終わらせる。すごく好きなスタンスです。自分のことを平均よりはタフな人間と自覚していたのですが、流石に産後はホルモンバランスの崩れからか、善悪問わず、強い言葉が極端に苦手になりました。今はそれほどでもなくなりましたが、とにかく誰かが怒っている、ひどく悲しんでいるという場面を見聞きするだけで気分が落ち込むようになっていたので「母の友」の優しく手をとって「大変な世の中ですが、小さくとも一歩一歩進んで、一緒に頑張りましょうね」という雰囲気がとても心地よかったです。ヴィカ以来はじめてこんなに大好きになった雑誌だったので、休刊のお知らせを見た時は本当に悲しかった…でもすでに休刊していたら、図書館の雑誌コーナーからも無くなってしまっただろうから、ギリギリのタイミングで出会うことができて良かったです。セーフセーフ。感謝の気持ちを込めて、来春の休刊までは全て購入することにしました。

わたしが特に好きだったコーナーは鈴木純さんの「植物、あの顔、こんな顔」、関根美有さんの「答えがほしいわけじゃないの」、小林エリカさんの「母の冒険」、リレー連載の「父の友」でした。鈴木さんのコーナーは読むと道端の草がとてもすごいものに見えてくるし、関根さんの漫画は決まった答えがなくても少しだけ人生を明るく見せてくれる言葉に溢れているし、小林さんのエッセイは共感と憧れが詰まっていて元気になる。父の友コーナーはクスッと笑ってしまうようなお父さんたちの苦労が語られていて、特に死後くん(さん)のエッセイが大好きでした。お姫様がしたい娘さんに頼まれてお父さん一人で魔王、勇者、お付きの猫までさせられるごっこ遊び、なんて壮大なんだ。

図書館の開架コーナーにあるものは全て読んだので、今は図書館の地下に眠っている1978年からのバックナンバーを順番に読んでいます。1978年6月号を読んだ時、今と変わらない悩みや喜びを抱えているどこかの母の言葉に、時間を超えた連帯を感じました。

母の友と一緒に母親として成長していくという夢は途絶えてしまいましたが、わたしにはまだ過去46年分のバックナンバーがある。わくわくです。

素敵な雑誌を作ってくださった福音館出版のみなさん、本当にありがとうございました。雑誌の1ファンとしては、季節ごとの季刊、または1年に1冊のペースでもいいので、復刊してくれないかなあと勝手に願っています。